相続法の改正4(遺留分に関する制度の見直し)

京都市中京区所在の西谷・三田村法律事務所の弁護士の西谷拓哉です。

さて、引き続き、2018(平成30)年7月6日に国会で成立した相続法の改正法案についてご紹介していきます。

第4回目は、遺留分についてです。

みなさん、『遺留分』という言葉を聞いても、ピンと来ないかもしれません。

遺留分とは、「相続において、自分に保証される最低限の相続権」のことです。

たとえば、父に、1000万円の土地があり、ほかに目ぼしい財産はなく、相続人は、父の子である長男と次男しかいないという場合を想定してください。

この場合、父が生前に、土地を全て長男に相続させるという遺言を残していると、次男には何らの相続する財産はないということになります。

民法はそれでは、次男に酷なので、自身の法定相続分の2分の1の割合で、長男が相続した土地の権利を引き渡すように主張する権利(=遺留分減殺請求権)を用意していました。

この制度について、下記の通り今回の相続法改正で見直しが行われました。

~遺留分減殺請求権が金銭の請求に一本化!~

 前述のように、これまでの遺留分減殺請求権は、相続財産が土地だけの場合などは、その土地について「自身の法定相続分の2分の1の割合で、長男が相続した土地の権利を引き渡すように主張する権利」でした。具体的には、前記の割合で、土地に自分の権利を登記するように請求する権利となり、権利関係としては、長男と次男で土地を「共有(=一緒に所有)」することになります。

 しかし、共有となることで、新たな紛争の火種になるなどかえって、紛争が深刻化するケースが多くありました。

 そこで、今回の改正で遺留分減殺請求権は「金銭」の請求権であることが明記されることになりました(改正民法1046条)。

~遺留分侵害額の算定方法の明文化~

 遺留分の請求をするには、当然のことながら、自分に最低限の遺留分が確保されていないことを計算する必要があります(=遺留分侵害額の算定)。

 これは、もともと明文がなく、判例法理に従い計算式が定立されていました。

 改正民法1046条2項は、この計算方法を明文化しました。

~遺留分を算定するための財産の範囲の変更~

 遺留分を算定する場合、まずは、被相続人の相続財産は全部でいくらなのかを算出しなければなりません。

 もともとの民法では、①相続発生1年前までの贈与、②贈与当事者双方が、ほかの相続人に損害を加えることを知ってした1年より前の贈与、③ほかの相続人に対する贈与(=特別受益)は全て、被相続族人の相続財産であったとして処理するものとしていました。

 しかし、③についてあまりにも昔の贈与まで含まれるとすると、法的安定性を害します。

 そこで、改正民法1044条3項は、相続人に対する贈与(=特別受益)は、「過去10年前」までのものに限ると変更しました。

~被相続人の相続財産の計算についての負担付き贈与の取扱い~

 負担付き贈与については、贈与された財産から負担の金額を控除した金額を、被相続人の相続財産に加算することになりました(改正民法1045条1項)。

~遺留分に関する制度の見直し規定の施行日~

法務省のHPによれば、

遺留分に関する制度の見直しに関する規定は、2019年7月1日から施行されることになっています。

つづく