相続法の改正2(遺産分割に関する制度の見直し)

京都市中京区所在の西谷・三田村法律事務所の弁護士の西谷拓哉です。

さて、引き続き、2018(平成30)年7月6日に国会で成立した相続法の改正法案についてご紹介していきます。

今回は、相続法改正で遺産分割制度の見直しが行われた箇所があるためご紹介します。

~①配偶者の相続分を保護するための法改正~

 婚姻期間が20年以上の夫婦が、配偶者に居住不動産を遺贈または贈与した時は、相続時にその居住不動産の価値を考慮しなくてよいものとする推定規定(=持ち戻し免除の意思表示の推定規定)が置かれました(改正民法903条4項)。

 この改正で、20年以上の婚姻生活を営んできた配偶者は居住不動産を亡くなった配偶者から譲り受けつつ、その他の預金等の相続財産の相続についても法定相続分に従った金額で相続することが可能になるなどの相続分の保護を受けることができるようになります。

~②預貯金債権仮払い制度~

 遺産に属する預貯金債権について、相続開始の時の債権額の3分の1に、払い戻しを請求したい相続人の法定相続分を乗じた額を、金融機関に単独で払戻し請求ができるようになる規定が置かれました(改正民法909条の2)。

 ただし、払戻し請求できる金額は、法務省令で定められた150万円が上限になりますので注意が必要です。

~③遺産の一部分割制度~

 これまで、遺産の一部について遺産分割ができることや、一定の要件のもと家庭裁判所に遺産分割の申立てをすることが認められていたところですが、民法上明確ではなかったため、今回、明確に遺産の一部について遺産分割や遺産分割の申立てができることを明示する規定が置かれました(改正民法907条1項)。

 ただし、一部のみの分割がほかの相続人に不利益を与える時は、一部の遺産分割は認められないことも明記されています(改正民法907条2項)。

~④遺産分割前に無断で処分された財産を含めた遺産分割が可能となったこと~

 これまで、遺産分割前に相続人の1人によって処分された預金などの財産は、相続人全員の同意がない限り、遺産分割の対象にすることはできず、無断処分を主張したい相続人は、別途無断処分した相続人に不当利得返還請求するなどして被害回復するしかない状況でした。

 しかし、相続法の改正により、無断処分した相続人の同意を得ることなく、その他の相続人が遺産分割の対象にすることを同意すれば、遺産分割協議の対象にできるという規定が設けられました(改正民法906条の2)。

~遺産分割に関する制度の見直し規定の施行日~

法務省のHPによれば、

遺産分割に関する制度の見直し規定は、2019年7月1日から施行されることになっています。

つづく