相続法の改正1(配偶者居住権等の創設)

京都市中京区所在の西谷・三田村法律事務所の弁護士の西谷拓哉です。

さて、2018(平成30)年7月6日、国会で、相続法の改正法案が成立しました。

これは、高齢化社会や家族意識の変化等を受けて、1980(昭和55)年以来ほとんど見直されてこなかった相続法が、実に約40年ぶりに改正されることになったものです。

相続法の改正は、我々一般市民にとっても、影響が大きいものです。

当事務所は、相続法の改正について、事務所内で意見交換などを行い、改正法対策を行っています。

この度、何回かに分けて、簡単ではありますが改正法案の紹介をさせていただきます。

~配偶者の居住の権利を保護するための法改正~

 自宅不動産に居住する夫婦のどちらかが亡くなった場合に、残された妻または夫の居住権を保護する権利が創設されました。

 下記の2種類があります。

①配偶者居住権(改正民法1028条~1036条)

 相続開始時に、自宅不動産に亡くなった方の妻又は夫が居住していた場合、遺産分割または、遺言で、残された妻又は夫が無償の使用収益権(=配偶者居住権)を取得するとされた時に取得することができます。この配偶者居住権は原則として終身の間存続します。なお、この権利は財産的価値があるものとされ、相続において考慮されることになります。

②配偶者短期居住権(改正民法1037条~1041条)

 相続開始時に、自宅不動産に亡くなった方の妻又は夫が居住していた場合、無償でそれまで居住してきている場合、たとえ、遺言で、残された妻又は夫が配偶者居住権を取得するとされていなかったとしても、①自宅不動産についての遺産分割が成立してから6カ月間を経過する日、または②自宅不動産について遺産分割が不要で、かつ自宅不動産の所有者から居住権の消滅を申入れされてから6カ月が経過する日までの間は、無償で自宅に住むことができます(=配偶者短期居住権)。

※配偶者短期居住権については、これまでも、判例(最高裁平成8年12月17日判決)で、被相続人の生前から承諾を受けて自宅不動産に同居していた相続人の居住権について、遺産分割が終わるまでの使用貸借契約が成立していると推認し、居住権を保護していたところですが、推定に過ぎずその権利性が極めて不確かなものであったため、この度、法改正でより強固な権利として創設したものです。

~配偶者居住権・配偶者短期居住権に関する規定の施行日~

法務省のHPによれば、

配偶者居住権・配偶者短期居住権に関する規定は、2020年4月1日から施行されることになっています。

つづく